俺俺

俺俺

俺俺

安部公房的な不条理世界。でもそういった面白さだけではなく、前半はネットなど情報に溺れ、繋がりや居場所を過剰に求める現代人の暗喩にとれ、とても面白く読めた。

ネットを通じて共通の趣味の人などを知ることができるから、実際の人間同士で趣向を合わせる必要がなったりするほか、情報網や交通網の発達で友達も、飯友なり、仕事友達なり、趣味用の友達だったり色々種類ごとに細分化しているらしい。無理に趣向を合わせるという苦痛を味わなくも言いうえ、ネットなどでは気を使わず趣向について語れるからそれはとても心地よい。が、その感覚が"俺達"を作りつつあるのかと、思いが及んだ。

後半は、観念的なので表現の遊びのようにも取れたが、それは多分私が鈍いからかもしれない。
全体として間違いなく面白いしい、著者の別の作品も読みたいと思った。