パンドラの匣

パンドラの匣 (新潮文庫)

パンドラの匣 (新潮文庫)

パンドラの匣”と“正義と微笑み”の2篇収録。
パンドラの匣は一般の太宰治のイメージとは少しことなるさわやかな恋の話。
こういうあふれんばかりの未来の希望だったり、ういういしい少年の恋心を書いた青春小説もあるんですね。よかったです。
正義と微笑み、も青春ものですが、こっちはこれぞ太宰治的な内容です。
移ろいやすい少年の繊細な心を描いていて、心をうまくコントロールできてない不安定さに青春の苦悩を感じます。人をすぐ自分の価値観にあわなければこき下ろし、一方ですごい人を見ると、自分なんて全然ダメだ、と落ち込む。頭は大人になろうとしているのに、心の感じ方はまだ子供みたいな、そのギャップによる苦悩がなんだかリアルに感じました。
それにこうしようと決断しても、いざやろうとするといろいろ逡巡して結局なにもやらないとか。
これは高校の時とか読んだら凄く共感しただろうと思いました。