日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

背表紙にあるあらすじには本書は大きな感動を呼んだ〜とあるが、
感動という言葉がもはや使われすぎの現在においては、
陳腐にすら思えるとも感じますが、読み終わった感想としては、確かに感動でした。

構造としては、“私を離さないで”と同じように徐々に主人公の背景や世界観が明らかになってくるというもの。(本作の方が先ですが)

いまさら気づいてももはやどうとも出来ない過去の出来事と、その悲劇性が最後の場面で明らかになった時、そこに向き合っていく年老いた主人公と夕日の情景が重なりとても感動的でした。

しかし、卿はそれをご自分の意思でお選びになったのです。少なくとも、選ぶことをなさいました。しかし、私は……私はそれだけのこともしておりません。私は選ばずに、信じたのです。

という言葉がとても琴線に触れました。
信じるという言葉はとてもきれいな意味の言葉ですが、ネガティブにな意味では責任回避ともとれます。
必死に気付かないようにして、事実を受容し責任を取ることを避けるのは良くない。