六つの星星
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/09/04
- メディア: 文庫
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性や生物に関連する話題が中心となる、斎藤環さん、福岡伸一さん、松浦理英子さんとの対談が良かった。斎藤さんとの会話の中で、斎藤さんがヴォネガットの「スローターハウス5」はフラッシュバックの話と言っているのがものすごく府に落ちた。たしかに。
自分もよくちょっとしたでき事やTVで見た映像等からイメージが連鎖して昔の思い出がよみがえり悩まされることがある。いいことも悪いことも思い出すが、9割は嫌な思い出だ。良いことを思い出しても、結局は現在には失われたものだ、という思いに至り、寂寥を覚え、どちらにせよ悪態をつくことで取り払ったりする。
フラッシュバックという症状かもしれない、ということに気づくと、病気かもしれないという不安より、名前のついた普遍的な症状なんだ、ということに対する安堵の方が大きい。それはみんなではないが、同じような経験をしている人がいることに気づかされるし、治療法なりがあるということの裏返しだから。
川上さんの本は、社会人生活で硬くなった感性をほぐしてくれるような気がする。
他にも、たとえば、好きなアーティストが売れる前から知っていて、後からはまった人に対して、何か優越感を抱いて、でも結局売れるということは、みんなが共感するものであり、なんら自分に特別な感性があるとかではなく、少しだけ早く知るきっかけがあったにすぎないのだ。なんかそういう人より早く知っているとかでしか自慢できると思えることがないのが悲しいし、そういう染みついてた価値観から解放されたくなる。そういう表面的なことより、物事の深い理解をしたい、そういう気持ちを抱かされる感じ。