夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

かなり良いです。感動しました。読んでて涙がこみ上げてきた。
本来この本のような輝かしく明るい青春像を描いた小説というのは苦手で、まぁそれは自分にはあまり縁がないというコンプレックスや嫉妬から来ている部分も多いです。どちらかというと“ライ麦畑でつかまえて”や中上健次の“十九歳の地図”のような影のある青春小説が好みです。どうも自分には夜のピクニックのような小説はまぶしすぎるので読むのを躊躇していました。

しかし読むと一気に引き込まれ、ぼくの憂いなどまったく無駄なものでした。歩行祭という非日常イベントでの友情や恋、人間関係。まさに青春。
登場人物も魅力的で、忍と融の打ち明け話や融と貴子の関係など回りも本人もどこかぐちゃぐちゃにしたくなる焦燥に駆られていて、こういうのは現実にも多い気がします。自分とも少しリンクしてしまうようなこともありほんと涙が出てきた。

こう自分の触れて欲しくない部分やコンプレックスというのは誰しも抱えているけど、その氷山が溶け出して涙になって零れたような気分になりました。心のリハビリではないですが、少し肩の荷がおりたような気がします。

歩行祭というイベントを通しての大人への成長の話ですがその中だけで完結しているのではなく、これからの日々にいくらか希望をもてるというかポジティブにとらえれるようになる話でした。