しゃべれども しゃべれども

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

ふとしたことから若手落語家が素人4人に落語を教える話。その4人はそれぞれ悩みを抱えているのだが、方言を馬鹿にされる少年、どもりのテニスコーチ、解説では物怖じしてしまう元プロ野球選手、人に厳しいことばかり言ってしまう女性、と総じていえるのは上手くしゃべれない。
そのおかげでで日常生活に支障というか問題が起きている。

主人公の落語家は、その4人とは違いむしろ思ったことをすぐ口にしてしまう。もちろんそれも時には問題となる。そんな主人公も、憧れている女性と上手く喋れない時にふと、普段からこううまくしゃべれないのは苦しいだろうな、と思ったりする。

なかなか思っていることをそのまま口にすることは勇気がいるものです。心から口までの道のりが長いとやはり苦しい。考えれば考えるほどわけが分らなくなってしまう。どこまで自分が思ったままを喋れているんだろう?伝えれているんだろう?という悩みは多かれ少なかれ誰しも抱く悩みです。
つまりは人との交わり繋がり方で悩んでるわけですよね。

町田康の告白の城戸熊太郎や太宰治人間失格の主人公にも通ずるところがある気がします。

最後はお約束な感じのオチですが、それもまた一興ではないでしょうか。