悪人

悪人(上) (朝日文庫)

悪人(上) (朝日文庫)

悪人(下) (朝日文庫)

悪人(下) (朝日文庫)

実話ではないけれど、町田康の告白や、古くは三島の金閣寺といった、事件の犯罪者がどうして犯罪にまで至ったかを描く小説。特に最近TVで報道されていた市橋逮捕だったり、島根女子大生行方不明事件とちょっと重なった部分もあり、引き込まれました。最後までこのテンションを維持してくれよ、と祈りながら読み進めましたが、最後まで途切れることなく期待以上でした。単純にストーリーや構成が良かった。まぁ普通本当の悪人とは?ってことを問っているのかもしれないけど、でも人を殺すということにまさる罪はないよなぁ、と現実世界の事件を見て思いました。

チャールズ・ブコウスキーの淫魔という短編があるのだけれど、それを読んで、カっとなり我を忘れて事件を起こした犯罪者は自分がどんなにその罪の重さを感じ理解して懺悔しても、はたから見れば極悪非道の犯罪者であり、なぜそうに至ったか?という気持ちを誰にも理解されないことが、本当につらいことだなぁと思います。だからただ泣くことしかできない。

悪人は、それを理解しようとした人が出てくる話だが、話にあるようにそれはわがままかもしれずで、世間からしたら余計罪を重ねてしまうことになって、悪印象。罪を犯したからといって、その人のすべてが悪だってわけじゃなく、犯罪と悪というのは同一でないということでしょうかねぇ。
でも悪人が必ずしも罪を犯すことはなくても、必ずしも犯罪者が悪でないかというと、それはどうだろうか。戦争で人を殺すのは悪でない訳で、世の中が許せば、ある種の社会契約があるから、それで犯罪があるわけで、善悪の概念とはまた別で。だから罪と悪は別畑の概念であるのはわかるけど。