ジューシーって何ですか

『ここで消えない会話がある』から改題で文庫化とのこと。
淡々と書かれており、さらっと読めますが、その中でセンスの良い洞察力にとんだ台詞が印象に残ります。音楽や文学、映画など芸術は弱い人間のためにある、と書かれおり、この小説自体もちょっと弱っているときに読むと、元気はでないけど多少癒されるかもしれません。

特に印象に残ったのは、登場人物が一般的でない仕事(新聞のテレビ欄の校閲)に取り組んでいる中で、評価する側は表現する側の気に食わない点をありえないと言い、表現する側は評価される側を正当に評価していないと判断する、そんな立ち位置が異なることによる一方通行さについて、きっと相手もそうなんだろうな、と思う場面です。理屈は立てる側につくという考えには共感します。会社間でもそうだし、社内でも立場によって変わるもんなと。理屈でさえそうなんだから感情はなおさらですよね。