真実真正日記

真実真正日記 (講談社文庫)

真実真正日記 (講談社文庫)

出張の移動時間暇だったので、数年ぶりに再読。
たまーに、主人公など登場人物の言葉というより町田康さんの本音のように感じる言葉があり、特に惹きつけられます。

例えば冒頭の

世間は本当のことを知りたがり、世の中には本当風のことがあふれている。でもそれらは全部嘘、単純なストーリーだ。人々は本当に本当のことは知りたがらない。なぜなら本当のことは疲れるし、本当に本当のことは誰にもわからないから。

他人にとって自分の人生がなかったことになるなどというのはそれは人間それぞれ忙しいから当たり前であるが、自分にとって自分の人生がなかったことになるというのは実に悲しいことだ。

また後半の下記文章。

僕は自分が気楽な小説家だったら、という仮定がこの日記を書き始めた。辛い人生の慰めとして。けれども、どんなに気楽なことを書こうとしても、どうしてもある形で逃れようのない僕の現実が入り込んでくる。

まさに読書がそうであり、音楽や映画、遊園地でもなんでもそう。自分から逃れるためにやる楽しむけど、現実の中にいる以上現実とは絶対切り離されない。

ちょっとネタばれではあるけど、主人公の日記の中で主人公が今書いている小説の登場人物が、実は主人公であり、そのように描いたのだ、とういドグラマグラちっくなオチであります。ちょっと自分の日記でもやってみたくなる。