小さな部屋・明日泣く

小さな部屋・明日泣く (講談社文芸文庫)

小さな部屋・明日泣く (講談社文芸文庫)

好きな作家を見つけると、その人の小説は虱潰しに読みたくなります。収集癖に近いものがあるかもしれません。色川さんは、4〜5年前にうらおもて人生録を読み、劣等生に対するやさしくて包容力のある語り口に惹かれました。※劣等生といってもいわゆる素行の悪い不良というより、精神的に劣等感を抱いている人間について語られています。小説でもその魅力は変わらずでいろいろ読みたいのですが、講談社文芸文庫から現在出ててる4冊は、如何せん値段が張ります。文庫なのに単行本価格。しかし学生のうちは手が出ませんでしたが、社会人になり金銭的余裕も生まれたので、多少の気兼ねは抱きつつも(面白くなかったらどうしよう)、買って正解でした、恐れ入ります。

本作は作風がバラエティ豊かです。私小説的なものももちろんですが、他人の人生を描いたものや、幻想的なもの、SF然としたものまで収録されています。私小説的な話はワンパターンになりがちですが、それらが良いアクセントとなってます。
特に印象に残ったのは、『眠るなよスリーピィ』『ひとり博打』『明日泣く』『甘い記憶』『男の旅路』あたりです。