お父さん大好き

芥川賞の候補作「手」は、彼女がいるとわかってて男と関係を持ち、不倫をして、一人の人と愛し合うより、自分に刺激を与えてくれ自分にとって都合が良い男と接することを望む孤高の女性を描いている。男からみると都合のよい女にしか見えないけれど、女性からすればそのように考える人もいるのか、と女性ならではの視点。しかしながらどこか冷めている瞬間があり、浮気や不倫する男を下に見て接している風がある。そのように人と接するのをかっこいいとみるのか、普通の幸せが手に入れられないからそうせざる負えない言い訳のようにとるか。
個人的には、そうせざる負えないからそうしているだけなのに、周りの人からあたかもそれが好きなように思われることは苦痛だ。

他の三篇はショートショートのような内容。
表題作の「お父さん大好き」はつらい目にあった(と思われる)中年男性の主人公が何気ない周りの人々の関わりで救いを感じ、まだ生きていこうといするという話。つらい目というのが具体的に何なのか、もしくはちりも積もれば、なのかはわからないが、主人公が生き続けることは偉いと考え、自殺しないことに異を唱えている、というところに影が見え、なんだか分からないが読んでいる自分も勇気を感じた。