引越貧乏

引越貧乏 (新潮文庫)

引越貧乏 (新潮文庫)

第三の男』『引越貧乏』が特に良かった。

第三の男』はエリートではないが下世話で実のある生き方をしている同級生を描いた作品。結局行方知れずになり評判を落としてしまうものの、エリートではない大多数の男が如何にハッピーに生きるかを示唆したという点で尊敬の念を抱いて書かれていることと、結果人生において帳尻が合わなくなったのだ、という思考が如何にも色川さんらしく好き。

『引越貧乏』は厭世感を抱く夫と、如何にも女性な考えの妻(文章では終始愚妻と書かれている)の会話の掛け合い非常に多く、何とも言えない妙があり、ついクスッと笑ってしまう。主人公が優柔不断で妻に振り回され、そしてそれを享受している様子が面白い。