頻繁にバビロンの白昼夢に浸るうだつのあがらない探偵の物語。
現実逃避という奴です。主人公はこういいます。
おれが彼と一緒に警察学校に通ってた当時にバビロンがおれを虜にしてしまったことは残念きわまりないではないか。もしかしたら、おれたちはパートナーになっていたかもしれないのだ。そしたらすばらしかっただろうな。まあ、いいや、バビロンだってずいぶんすばらしいのだから。たしかにおれの人生はやや困難になったが、年がら年中バビロンの夢を見ることを遺憾に思ったことはない。
おれは彼のろくでなし、それでよかったんだ。デカになって、現実の時間に縛られて犯罪と戦うなんてより、バビロンのほうがずっといい。
彼とは警察の巡査部長であり、優秀かつ人々に畏怖の目で見られている男です。
こういう本人も気づいてない哀しさ、というのはほんとに虚しい。
つよがり、負け惜しみ、いやはや虚しい。しかしここまで行かなくてもこんなのは現実に溢れています。自分にも。それを、おまえもそうだろう?と突きつけられている感じで、ちょっとつらい。

まあ悪いことではないと思います。何かに夢中になり、依存するのはある意味必然だと思うのです。生きるうえでは、必要不可欠だと思うし、きっとそれは間違ってないと思います。虚しいと思ってるうちはまだ青いのかもしれません。。

全体としてはなかなか面白かったです。ブコウスキーのパルプに近い感じです。ただパルプより現実的というか、希望や救いというものはない、という。しかし主人公はそんな白昼夢に浸る自分や救いのない環境にいながら自暴自棄にならず生きている。へこたれてたまるか!といっているのですが、いやはやほんとそうですよね。。そういう意味では小さいけど、現実的な希望はあるのかも。へこたれてたまるか!精神でがんばらないと。