麦踏みクーツェ

麦ふみクーツェ (新潮文庫)

麦ふみクーツェ (新潮文庫)

かなり良かったです。好きな本ベスト10には間違いなくノミネートされます。
残酷だけどやさしくもあるストーリー。
「良いも悪いもない、麦ふみだもの」というクーツェの言葉が胸にしみます。

とにかく素敵な物語でした。なにより音楽とくに合奏することの喜び、を感じました。
一つ面白かったエピソードは吹奏楽では太鼓やシンバルは一番後ろで突っ立ってあまり演奏しない。でもホントはすごいプレッシャーを抱えている。むしろバイオリンみたいに弾きつづけるほうがいいくらい。なぜならもし少しでも間違えれば、すべてを台無しにしかねないからだ。

吹奏楽ではないが、邦楽でもずっと引き続ける節より間があったりするほうが難しいと感じることが多い。間もあわせて演奏なんだから。いやはや、でもそういうのって音楽だけじゃない気がする。

人の悩みはすべて人間関係が起因していると思うのですが、人をきらいになったり、喧嘩したり、ぐちったり、イライラしたり、悪口言ったり、そういうのは誰でも多かれ少なかれあり、そんな騒音が世の中や人生には溢れ返っていて耳を覆いたくなるほどです。

でもそんな騒音の中にも流れがあって、自分の音を出さなきゃいけないときって必ずあると思うのです。でそこで上手く鳴らせばしてやったり、鳴らさなかったり失敗したりすれば、すべてが台無しになってしまうことってやっぱありますよね。実際管楽器や弦楽器のように鳴らし続け人のほうが楽な気もしますが、ずっと演奏続けるのもきついんでしょう。自分の生まれ持ったスタイルで演奏していくに他ないです。

騒音聞くのが嫌で耳を覆って、音を鳴らさなかったり、失敗したり、ずれたり、そんなことばかりだけど、たまに上手くいったりするんで、これからも演奏を続けないと。

耳を覆ってばかりじゃそのタイミング聞き逃すばかりだからな。

そんなことを考えたりで、まぁ全体的に素敵な本でした。
長いけど中だるみもせず、いいテンションをキープしてました。おススメです。