太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

これはやばいです。現代のさえない男の可笑しく切ない青春小説。
巷に溢れている恋愛小説よりよほどセツナイ(ToT)

女に袖にされたさえない主人公、最初はじゃっかんストーカーまがいですが、徐々に立ち直っていく、建前ではなく本当に立ち直る、ので最後には涙。本当に悲しい時は、頭でも、心でも分らない、もっと奥から溢れてくるですよね。

妄想満載の真剣なふざけ具合。そんな壁で自分を守る男。
失恋とそれを乗り越えることは、現実にはありふれまくってて誰もが通る道ですが、でもとっても美しくて、そんな純な男心が満載です。

追加
主人公は振られたことを正面から受け止めず、いろいろな言い草をつけ認めようとしません。正面から向き合わないのです。それは傷つきたくなからまた諦められないからなのか。
しかしこの小説に妙にリアリティーを感じたのは、失恋から立ち直る時に、いろいろあがいていて、ふと気づいたら立ち直っていた、というところです。だいたいにおいて失恋から立ち直ろう意識としているうちは本当に立ち直れないもんですもの。主人公が前に付き合っていた女性のことを好きな人がへたれで電話もかけられないので、主人公はイライラして、自分がボタンを無理やりおして電話させます。それでその男は主人公の前の彼女とデートすることになり喜びます。でそれを主人公は、オレ何してんだろみたいな気持ちでふと、立ち直ってるのかもみたいに思うわけです。

しかしその後、回想シーンだか忘れましたが、今日ぐらい人並みの悲しみに浸ったっていいじゃないか、とそのときだけ心の壁を取っ払い、素の言葉をつぶやくとこは、ウルッときました。