クワイエットルームへようこそ

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

いきなりプチグロい場面から始まるのでなかなかショッキング。
精神病院の閉鎖棟のなかで展開される、狂ってる狂ってないという基準が曖昧な常識というものさしのない環境で、主人公の心の救済が行われていく。

何かで読んだ気がしますが、心というのは一つの要素から成り立っているのではなく、いくつかの要素からなりたっているらしい。狂っているというのは一つでも狂っていたら他がまともでも傍から見たらその人自体が狂っていると認識されてしまうのがなんともいえない。だからその分本人も自覚しにくいんだよな。でも人間、得意不得意なんて誰にでもある、つまり過剰と欠損で構成されてるんだから、誰もが狂気に落ちることと隣りあわせで日々生きているのかもしれないな〜

最後のせつない結末もなかなか勇気のいる決断だ。自分の状態を受け入れ、これからのことを考えてないとないとできない。
結局精神病院だろうがどこだろうがそこにはまって納まってしまってはだめなんだろうな。たしかに居心地いいが、一つの環境で、例えば精神病院でアイドルだったからってそんなの何の自慢にもならないし。

他で通用するわけないんだよ。きびいしい現実。だからこそ結末をせつなく感じるんだろうな。

あとこの小説もしかしたら主人公が今後この精神病院の戻ってこない保障がないということをなんか読んでて感じ取れるのが面白い理由かも。たしかに主人公は自分を受け入れ前を向いて歩き出したが、いたって正常に見えた栗田さんがおそらく戻ってきたように、主人公にもその可能性がある。でもそれを含めて主人公は自分を受け入れ前に進んだ気がする。それって大事なことだなきっと。