カブキの日

カブキの日 (新潮文庫)

カブキの日 (新潮文庫)

カブキが世の中のエンターテイメントの中心になっている世界での物語り。主に蕪とい少女と月彦という若衆(若いカブキ俳優)が迷宮のような世界座三階で蕪の祖父に会いに行く話しと、京右衛門と水木あやめの派閥争いの二つを軸に物語りは進む。

歌舞伎のことはほぼ無知ですが、なかなか楽しめました。歌舞伎ではなくカブキという表記というのも現実の歌舞伎とは別物だということを主張しているんだと思います。
カブキの世界のイメージというとすごく閉鎖的ということです。一部の関係者にしかその実態が分らない感じ。その分のインスピレーションというか想像が肥大化したような世界観です。

この作品は三島由紀夫賞を受賞した作品のようですが、その選評で石原慎太郎が、ゲームのような展開うんぬんと表現していたのには納得です。特に蕪と月彦のちょっとした冒険、設定など。たしかにゲームぽい展開です。いっぽうで京右衛門と水木あやめの争いというのも緊張感があり面白かった。
カブキの神秘性をうまく昇華したかなりファンタジックな内容です。