魔王

魔王 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)

これまで読んだ著者の本で一番おもしろかったです。といっても重力ピエロと鴨とアヒル・・・しか読んでないのですが。
『魔王』とその5年後にあたる『呼吸』が収録されています。
政治のことやファシズムのような思想など小難しいことがでてくるのが今までと違い新鮮でした。
とてもスリリングなストーリーで、デスノートに近い雰囲気がします。どちらとも世界を変えようとする話。とはいえ主人公はキラもしくはLほどの能力はなく、ほんと微々たるもので正直あがいているにすぎず、実は意味のないことかもしれないしむしろしない方がいいのかもしれない。でもそれでも、なんとかしようとする姿は滑稽でありなんだか悲しい。そういうやるせなさにリアルな人間味を感じます。そこが一番の魅力かもしれません。
ただもっとストーリー長くしてもよかったんじゃないかなとも思います。意外と最後はあっさりしてます。ただそれは続きの『呼吸』があるから、まぁそれで良かったのかもしれません。

あと登場人物たちが引用するニーチェの言葉や宮沢賢治の詩などがうまいことマッチしてすごく印象的でした。主人公の置かれている状況や先の展開なりを暗示して嫌でも色々な想像を掻き立てられます。

魔王の50年後を舞台にしたモダンタイムズというの小説が近々出るようですが純粋な続編なら読みたいな〜