わたしを離さないで
- 作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/08/22
- メディア: 文庫
- 購入: 32人 クリック: 197回
- この商品を含むブログ (292件) を見る
読むにつれて物語の謎が少しずつ明かされていき、登場人物の置かれている状況、逃れられない運命を見るととても切なくなる。
登場人物たちはその状況から逃げず、微かな希望は抱くものの最後は受け入れるのです。
そのように育てられたというのもありますが、でもなんのために生きているの?と生きることにほとんど絶望しない。反抗しない。
でもそれはある種すべての人間がそうなのかもしれない。生まれた場所で生きていくしかないのだものなぁ。恨むことはあっても、折り合いをつけていくしかない。。
この小説は主人公の女性の回想スタイルで書かれています。過去の華やかな記憶はいつまでも色褪せることありません。
最後に主人公の女性は空想をします。それは事実を度外視し過去にとらわれた妄想ですが、それを途中でやめます。
生きていくためには、悲しいかな、それらをふりほどいて前に進んで行く必要がある。
どうしようもない未来でも生きていかねばならないのだと。春ですね。