わたしを離さないで

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

アジカンの後藤氏が薦めていたカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を読みました。

読むにつれて物語の謎が少しずつ明かされていき、登場人物の置かれている状況、逃れられない運命を見るととても切なくなる。

登場人物たちはその状況から逃げず、微かな希望は抱くものの最後は受け入れるのです。

そのように育てられたというのもありますが、でもなんのために生きているの?と生きることにほとんど絶望しない。反抗しない。

でもそれはある種すべての人間がそうなのかもしれない。生まれた場所で生きていくしかないのだものなぁ。恨むことはあっても、折り合いをつけていくしかない。。

この小説は主人公の女性の回想スタイルで書かれています。過去の華やかな記憶はいつまでも色褪せることありません。

最後に主人公の女性は空想をします。それは事実を度外視し過去にとらわれた妄想ですが、それを途中でやめます。

生きていくためには、悲しいかな、それらをふりほどいて前に進んで行く必要がある。

どうしようもない未来でも生きていかねばならないのだと。春ですね。