狂人日記 マンガは哲学する

狂人日記 (講談社文芸文庫)

狂人日記 (講談社文芸文庫)

これはとてもよかった。繋がりたいという思いが切実に伝わってくる。繋がれない、でも諦めも切れないというなかで幻想に苦しむ。
一文一文の独白がとても胸にしみます。
多かれ少なかれ誰しも人づきあいには、悩みがあり、それは狂人日記と程度の差こそあれ、共感する部分があり、胸がつまります。
マンガは哲学する (岩波現代文庫)

マンガは哲学する (岩波現代文庫)

これも面白かった。
藤子F不二雄や手塚治虫楳図かずお松本大洋など(半分以上知らない漫画家でした)のマンガを哲学目線で論じるというものです。なかなか刺激的でおもしろかったです。
とくによかったのは“自虐の詩”というマンガです。そのマンガからの引用があってちょっと感動しました。

会ったこともない母親に向けて、主人公の幸江は届くはずのないこんな手紙を出します。

「前略、おかあちゃん。この世には幸も不幸もないのかもしれません。なにかを得ると必ず何か失うものがある。なにかを捨てると必ずなにか得るものがある。たったひとつのかけがえのないもの、大切なものを失った時はどうでしょう。私たちは泣き叫んだり立ちすくんだり・・・・・・でもそれが幸や不幸ではかれるものでしょうか。かけがえないものを失うことは、かけがえのないものを真に、そして永遠に手に入れること!私は幼い頃、あなたの愛を失いました。私は死に物狂いで求めました。求め続けました。私は愛されたかった。でもそれがこんなところで自分の心の中でみつけるなんて。ずっと握りしめてきた手のひらを開くとそこにあった。そんな感じで。おかあちゃん、これからは何が起きても怖くありません。勇気が湧いてきます。この人生を二度と幸や不幸ではかりません。なんということでしょう、人生には意味があるだけです。ただ、人生の厳粛な意味をかみしめていけばいい。勇気が湧いてきます」


勇気が湧いてきます。マンガ自体も読んでみたいです。