コインロッカー・ベイビーズ

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

コインロッカー・ベイビーズ(下) (講談社文庫)

コインロッカー・ベイビーズ(下) (講談社文庫)

疾走感がありおもしろかった。ハシとキクは鉄コン筋クリートのシロとクロとダブって見えた。
ハシは自閉の象徴で、キクは破壊の象徴みたいとあとがきにありました。ハシは歌手としてスターになるけれど、
過去のオカマで弱虫だった自分からまったく別の人間のようにふるまうようになりますが、しかし過去にさいなまれていきます。バンドメンバーにも、急に売れた人間の思考で一番いけないのは、生まれた時からそうだったかのように振舞うようになることだといわれます。

鉄コンでクロが闇を否定するのではなく受け入れ、取り込みうまく飼いならして折り合いをつけていくようなりますが、それが大人になるということで、自立するということなんだろうと、思います。
ハシは自分の落ち着かせる音を求めて歌手になり歌を歌いますが、最後の方で精神病院で、他の患者に元気な歌が聴きたい、と言われます。結局たいして過去と変わっていなかった自分に気づき、そして自分の過去を受け入れることで、新しい歌を望むようになります。そのような脱皮物語として読めました。