すべて真夜中の恋人たち

すべて真夜中の恋人たち

すべて真夜中の恋人たち

近くのショッピングモールでサイン会があったので購入。とても良い人でお客すべてにお礼と言葉を交わしてくれました。そしてお美しかった。緊張して何も話せなかった。

ちょっとまえに爆笑問題のラジオに出演されていた時に、小説の登場人物が勝手に動かないように絶対に管理するといってて、はぁなるほど、と思った。
読んでてメタ的な構造が気になってしまうから。
川上さんの小説は、なんだかんだ読んでいて、前作ヘヴンは面白いけど、哲学的テーマを小説にまで消化しきれていない節があり、物語性が薄く何か登場人物たちの主義主張に目が行ってしまい小説を読むよりは参考書を読む印象だった。狙いすぎているというか、隙がないというか。乳と卵や、私率とかはそうでもなかったけど。
でも今回は所々で、登場人物の好きなように動かして書いた時があったらしく、言われてちょっと分かった気がする。個人的には良い傾向だと。

主人公がさえない煮え切れない女性だけど、読んでると、恥ずかしいから朝っぱらからお酒を飲んで好きな人に会うとか、なんともチャーミングに思えてきて、読み終わることろにはとても切なくなった。

そして言葉のセンスは良いです。記憶のどこでもないここに立って、とか、遠くにある痛みだった、とか。でも人によってはそのような情景描写や感情の描写に比喩などでこれでもか!というくらい語らているのは冗長と思う人もいるのかもしれません。

光とか記憶や音楽など、時間に関係ない、いつでもそこにあるような、でもそこにはなくて、暖かさがあるのに切なさがある小説でした。