宿屋めぐり

宿屋めぐり

宿屋めぐり

期待以上におもしろかった。先の読めないひゃちゃめちゃなストーリー。
パンク侍、斬られて候」と「告白」を足した感じの内容。
パンク侍のような時代小説なのに、突如現代の話題が出てきたり、今風のしゃべり方になったりする。一方で、告白のような、思考と現実のずれみたいなもの、今回は自分と世界のずれ、自分って何みたいな、ことに悩み苦しみ、最終的には運命とか輪廻のような観念の話になったり。

よく普通に生きていて、狂っているのは俺か、世界か?みたいな問いがあるけど、この小説では、贋の世界にいて、おかしなのは世界、とわかっているのでその場合どういう行動をとるか、という問いは興味深かった。

あと読んでいて、途中から主と主人公の関係が、キリストとその取り巻きの人を連想せずにいられなかった。太宰治の「駆け込み訴え」を思い出した。それともしかしたら贋の世界は、ぼくらの言う現実世界で、元いた世界というのは天国とかそういうとこかもしれないとか思った。結局贋の世界なのか主が何なのかよくわからなかったけど。
ただ主人公は調子乗りで自分の都合のいいよう解釈する、なんというか愚かな人間だけれど、他人事とは思えなく、読んでて苦しくなった。石ヌに捕まり尋問された時は、読んでてこっちもなんかすごい絶望的な気持ちになり落ち込んだ。そこが苦しさのピークであとはラストに向かって一直線で、最後は救われたのかどうかよくわからなかったけど、でもその感じが精神衛生的に良かったので少しほっとした。